一人旅 ~3日目③~
PM11:30 ヒッチハイク開始。
手始めに軽く親指を立てるが見事に続々と僕をスルーして車は通り過ぎていきます。
たぶん、僕にほんの少しの恥じらいがあったから。
堂々としてなかったからだと思うんです。
誰がね、深夜にオドオドしながら親指を立ててる人間を乗せてやろうと思うのか。
それに気付いた僕は胸を張り、そして腕をまっすぐ伸ばして立ち尽くしました。
しかし一向に車が止まる気配がない。
そうこうしてるうちに時間は12時を回り日付が変わっていました。
一体僕には何が足りないんだ?
窮地に陥ったときには焦らず冷静に解決策を模倣する。
それが成功へとつながるんです。
そしてしばらく考えた僕は論理的な答えを導き出しました。
俺には本当に車に乗せてほしいという気持ちが足りない!!
僕が本当に車に乗せてほしい、ヒッチハイクをしたい!
そう思うなら、そのオーラから絶対に車は止まってくれるはずなんです。
では一体、実際に何を行動すれば良いのか?
そして、考えた末僕は答えをまたもや論理的に導き出しました。
さすが理系。
車が通り過ぎる瞬間に、僕のありったけの想いを車に向かって叫ぼう!
きた。車だ!!
「お前の車に乗せてくれ~!」
「ちょっとそこまで乗せてってくれへんか?」
「意外と大人しく乗りまっせ!」
「俺たちの出会いって運命やと思うんや。だから乗せて!」
などなど…。
それらが全戦全敗…。
一体なぜだろう。
これでもかっていうくらいに想いを伝えているのに。
どうして?
どうして私の思いに応えてくれないの?
てな感じで、ありったけの想いを告白してるのに見事にスルーされる感じがなんか告白してフラれてる感じに似てきた気がしたので趣旨を変えてこの状況を楽しむことにしました。
どうせ車に向かって何か言うならお題を付けよう。
よし、題して、
『告白100選』
ありとあらゆる世の中の男女間で行われる告白。
それを100個言ってやろうじゃないか。
最初の車がやってきました。
記念すべき最初の告白。
やっぱり最初はシンプルにいこう。
「お前のことが好きやねん。
オレと付き合ってくれへん?」
よし、言ってやった!
ブーン!!
やっぱりものの見事にスルー。
しかも過去最大のやるせなさ。
一体何なんだ、この切なさは…。
本気で告白したのに…。
しかし考える間もなく車はやってきるんです。
自分の気持ちを伝える告白に考えたセリフなんていらない。
ありのままの、そのときの自分の気持ちを口にしよう!
そのとき、気持ちの良い風が吹き抜けてきました。
そして僕が言ったセリフ。
「風が気持ちええなぁ。
でも、オレともっと気持ちええことせえへん?」
うわっ。
告白100選2発目にして下ネタですよ。
これは酷い。
そんなのにもちろん車が止まるはずもなく、そして自分が言ったセリフに
自虐の念しか持たない僕。
インスピレーションで言ってはダメだ。
ちゃんと考えて告白のセリフを言おう。
そう思ってると、対向車線でいきなり車が止まるんです。
僕がヒッチハイクをしてる斜線とは違うので向こう側で車がとまる道理はありません。
一体あの車は何だ?
なんて思ってると、1m、また1mと少しずつ前に近付いてきます。
そして運転席の窓が開き、男が僕に声をかけてきました。
得体の知れない車の正体は?
次回に続く。